日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: S1-4
会議情報

シンポジウム 1 急性中毒の予後に影響するバイオマーカーの臨床および基礎毒性学的な考察
トランスレーショナルトキシコロジーとバイオマーカー
*山田 弘堀井 郁夫
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 医薬品による急性中毒は、自発的あるいは偶発的な通常用量を超える過剰服用が原因となった事例が多いと考えられるが、その他、投与薬剤に対する感受性に係る個人差、併用薬剤との相互作用なども原因となる可能性がある。医薬品開発の過程においては、非臨床毒性試験(過剰摂取については主に単回投与毒性試験)および臨床試験で当該医薬品の安全性プロファイルを評価するためのデータが収集されるが、残念ながらこれらから得られるヒトでの急性中毒に係る情報量は限られている。加えて、毒性データにおけるヒトと動物の間での潜在的な種差も考慮する必要がある。それ故、現状では市販後における継続的な安全性情報の収集・集積・解釈と当情報に基づく治療方針の立案が重要となっているが、いうずれにしても後おいでの対応となる。従って、ヒトの急性中毒において引き起こされる障害の質、程度、回復性および個人差に係る評価能力を向上させ、有害作用の回避、推奨する治療法の確立などを実現する非臨床段階での新手法の確立(トランスレーショナルトキシコロジーの発展)が望まれている。この課題を克服するための一つの手段として、動物からヒトに外挿可能な新規バイオマーカーの開発が挙げられる。バイオマーカーは、ある生理学的状態に対して先行・後行して、又は同時に示される生物学的指標(反応)を意味するといえ、遺伝子発現、タンパク発現、代謝産物、体温など、様々な変化がバイオマーカーと成り得る。通常は、心拍数、呼吸、血圧、体温、意識レベルなどのバイタルサインが臨床急性中毒の初期治療における重要なバイオマーカーとなるが、遅延型副作用への早期対応、原因の特定、治療方針の設定、予後のモニターなどを実行するためには新たなバイオマーカーが必要となる。
 本シンポジウムでは、急性中毒による有害作用をモニターするバイオマーカーを中心に考察する。

著者関連情報
© 2014 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top