抄録
核酸医薬品として、アンチセンスであるfomivirsen sodium(販売名:Vitravene、現在販売されていない)及びmipomersen sodium(販売名:Kynamro、米国)並びにアプタマーであるペガプタニブナトリウム(販売名:マクジェン、日米欧)が承認を取得し、多くの候補物質が開発段階にある。今までの開発経験から、核酸医薬品の安全性に関して、①配列に依存して標的分子に作用(ハイブリダイズ)すること(on-target効果)に起因する毒性、②標的分子以外に作用(ハイブリダイズ)すること(off-target効果)に起因する毒性、③核酸分子そのものの物性に起因する毒性(toll like receptorを介した免疫系の活性化、血液凝固の延長、補体の活性化、腎・肝毒性、血小板減少など)に留意する必要があることが知られている。しかしながら、核酸医薬品の臨床上の安全性プロファイルについて、十分な知見が蓄積しているとは言えない。そこで、既承認品目の審査報告書から得られた以下の事例を中心に、核酸医薬品に特徴的な安全上の懸念について、臨床試験結果を非臨床試験結果と比較しながら紹介し、安全性評価について議論したい。
1. ペガプタニブナトリウムでは、海外で過敏症が認められたものの、非臨床試験で免疫原性が否定されたことから、併用薬による可能性が考えられている。また、静脈内投与による毒性試験において、慢性腎症や血液凝固の延長が認められているが、臨床使用(硝子体内投与)では暴露量が少なく、問題はないと判断されている。
2. mipomersen sodiumでは、臨床試験で肝障害や注射部位反応が認められ、添付文書上で注意喚起されている。なお、米国食品医薬品局(FDA)は、こうした副作用があるにもかかわらずmipomersen sodiumを承認しているが、欧州医薬品庁(EMA)はこれらの安全上の懸念があることを理由に不承認の決断を下している。