日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: S19-3
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シンポジウム 19 次世代が切り拓く革新的免疫毒性研究
環境化学物質による免疫応答の修飾 -アレルギーに及ぼす影響機序の解明に向けて-
*小池 英子柳澤 利枝高野 裕久
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抄録
 生活環境中には、大気汚染物質や、建材・日用品等に由来する室内汚染物質、食品添加物、農薬など、実に様々な化学物質が存在している。これらの環境化学物質は、近年のアレルギー疾患増加との関連性が懸念されることから、その影響と作用機序を明らかにする必要がある。我々はこれまでに、様々な環境化学物質を対象とした実験を行い、ある種の環境化学物質が、Th2応答の亢進を介してアレルギー性喘息やアトピー性皮膚炎の病態や炎症反応を悪化させること、その機序として、炎症局所やリンパ組織における抗原提示細胞の活性化の重要性を指摘してきた。
 例えば、プラスチックの可塑剤として汎用されているフタル酸エステルや、大気汚染物質として知られるベンゾ[a]ピレンの曝露は、アトピー性皮膚炎を悪化させるが、そのマウスの所属リンパ節において、樹状細胞を始めとする抗原提示細胞とT細胞の増加および活性化を認めた。また、in vitroにおいて、マウスの脾細胞からT細胞と抗原提示細胞(B細胞、樹状細胞、マクロファージ)を分離し、各細胞種に対する環境化学物質の影響を解析した結果、T細胞に対する直接的な影響は低いが、抗原提示細胞からの刺激が存在する場合には、IL-2産生を増加させ、T細胞の活性化を促進することを見出した。さらに、骨髄由来樹状細胞を用いた検討では、これらの環境化学物質が、樹状細胞サブセットに影響を及ぼす可能性を見出した。
 環境化学物質の標的細胞は物質により異なる可能性があるが、総じて、免疫・アレルギー反応の増悪には、抗原提示細胞によるT細胞への抗原提示の経路に対する修飾が重要な役割を果たしていると考えらえる。本講演では、このような環境化学物質による免疫担当細胞の機能修飾について紹介する。
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© 2014 日本毒性学会
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