日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: S19-4
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シンポジウム 19 次世代が切り拓く革新的免疫毒性研究
培養細胞を用いるアレルギー試験「EXiLE法」の開発と応用
*中村 亮介
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抄録
即時型(I型)アレルギー反応は、IgEを介するマスト細胞の活性化を引き金とする有害な免疫反応であり、学校給食での誤食事故やいわゆる「茶のしずく石鹸」の問題など、しばしば社会問題となることがある。IgEはマスト細胞が発現する高親和性IgE受容体(FcεRI)に結合してこれを感作し、さらに多価のエピトープを持つ特異抗原が複数のIgEを架橋することにより細胞を活性化し、脱顆粒やサイトカイン産生などを誘導する。In vitroのアレルギー試験法は、固相化した抗原とIgEとの結合性を二次抗体を用いて定量する免疫化学的手法が一般的である。しかし、この場合はIgEの架橋を必ずしも反映できていることにはならず、アレルゲン性を過剰に見積もってしまう危険性をはらんでいた。
我々は最近、ラット培養マスト細胞株にヒトのFcεRI遺伝子とNF-AT依存的にルシフェラーゼを発現するレポーター遺伝子とを安定的に組み込んだ細胞株(RS-ATL8細胞)を作製した。この細胞は、内在性のラットFcεRIも発現しているため、ヒト・ラット・マウス等のIgEにより感作することができ、特異抗原の添加によるIgEの架橋を介した細胞の活性化をルシフェラーゼアッセイによって簡便かつ高感度に検出することができる。我々はこの手法を、IgE Crosslinking-induced Luciferase Expression(EXiLE)法と名づけた。
卵白アレルギー患者血清を用いてEXiLE法と従来の脱顆粒測定法とを比較したところ、後者はバックグラウンドが問題となり、抗体価の低い患者血清の測定が困難であった。また、マウス抗オボアルブミン(OVA)IgE抗体を用いてELISA法との比較を行なうと、固相化したOVAと液相中のOVAには明瞭な応答性の違いが認められた。さらに、茶のしずく石鹸に感作された患者血清を用いた解析では、経口摂取した小麦グルテンの代謝過程を追った抗原性の変化について解析することに成功した。当日は、EXiLE法のさらなる応用についても考えてみたい。
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© 2014 日本毒性学会
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