日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: S19-5
会議情報

シンポジウム 19 次世代が切り拓く革新的免疫毒性研究
長期ステロイド外用療法に伴う掻痒性皮膚毒性
*山浦 克典
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
 ステロイド外用剤はアトピー性皮膚炎をはじめとする慢性掻痒性皮膚疾患の治療において、第一選択薬として広く使用されている。我々はこれまで、慢性掻痒性皮膚炎マウスに対する長期ステロイド外用療法が、掻痒の増悪を誘発する事を報告してきた。ステロイド外用薬は相対的効力により5段階に分類され、患者の重症度に応じた効力のステロイドを選択する為、患者により適用されるステロイドのクラスは異なる。我々は、BALB/c系マウス耳介に2,4,6-trinitro-1-chlorobenzene (TNCB)を5週間反復塗布することで慢性掻痒性皮膚炎モデルを作成した。デキサメタゾン (DEX: mediumクラス)、プレドニゾロン (PSL: weakクラス)および吉草酸ベタメタゾン (BMV: strongクラス)は、いずれも長期塗布により本モデルの掻痒反応を同程度に増悪さたことから、本現象はステロイドの効力クラスに依存しないことを明らかにした。我々は、本掻痒増悪機序解明の一環として、マスト細胞由来の内因性掻痒抑制因子であるPGD2の生合成酵素であるH-PGDSについて耳介組織中のmRNA発現量を検討した。その結果、H-PGDS mRNA発現は皮膚炎マウスで顕著に亢進しているものの、いずれのステロイドも効力クラスに関らず同程度に抑制することを明らかにした。このことから、長期ステロイド外用療法が誘発する掻痒亢進は、H-PGDS抑制によるPGD2産生低下に伴い抑制性の掻痒調節能が低下し、その結果掻痒反応が亢進している可能性が示唆された。さらに我々は、長期ステロイド外用療法に伴う掻痒症状増悪を特徴とする皮膚毒性を、ヒスタミンH4受容体拮抗薬が軽減し得ることを見出した。ステロイド外用による掻痒誘発機序の詳細を解明する事で、より安全な長期ステロイド外用治療の確立が期待される。
著者関連情報
© 2014 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top