抄録
医薬品開発においてヒトPKを予測するために必要な要素は代謝クリアランスの予測である。約80%の医薬品の代謝にチトクロームP450(CYP)が関与しているために、ヒトCYPが関与する代謝クリアランスの予測は、近年経験則やin vivoやin vitroのモデルに基づき、予測性が向上したために、CYPによる代謝が問題となる事例が著しく減少してきた。近年、CYPによる代謝を受け難く、代謝的に安定な候補化合物が選ばれる傾向になって来た。しかし、予期せぬnon-CYP代謝酵素による代謝を受けることによって、高クリアランスや低バイオアベイラビリティを示す事例が報告されるようになって来た。Non-CYP代謝を検討する場合には、関与する酵素の同定から始める必要がある。さらに、同定した酵素が、CYPと同様な代謝安定性試験が適用できないことや、種差の程度や薬物相互作用の情報が極めて少ない場合も有る。さらに、ヒトにおける遺伝子多型の種類とその活性への影響も気になる点であり、ヒトクリアランス予測の精度がどの程度であるかなど不明な点が多い。講演では、本シンポジウムの企画の背景として、様々な第I相および第II相のnon-CYP代謝酵素を紹介し、現状を概説する。