抄録
試験法のバリデーションとは、新規に開発された試験法の科学的妥当性、再現性および正確性を確認する研究である。試験法が国際的かつ行政的に受入れられるためには、昨今では必須の研究である。
バリデーションを実施する際には、バリデーション実行委員会を組織し、3施設以上の参加施設の協力を得て、コード化した適切な被験物質を用い、複数のphaseを経なければならない。各phaseに半年を要し、最短でも組織立ち上げから約2年で終了する作業でもある。しかし、試験法によっては、phaseを重ねなければならない場合を多く経験する。そのほとんどは、バリデーションの初期段階である再現性確認のphaseで経験する。再現性が悪いとは、それらを用いた実験結果がばらつき、技術移転性、施設内および施設間の結果が一致しないことを指す。この原因は、プロトコルが未成熟であること、特に新たに開発された細胞やその細胞を用いた構造物に起因する場合が多い。ばらつかない試験などないので、ある程度のばらつきはプロトコル内の適合基準の変更や試験の繰り返し回数の設定により回避できる。しかし、試験法が公定化された後も、その試験法が普及することを望むのであれば、細胞やその細胞を用いた構造物を再検討すべきである。試験法開発者がそこに至るまでに多くの研究を積み重ねてきたことは理解するが、バリデーション参加者の声に謙虚な姿勢で耳を傾けることが、実用性および汎用性が高い試験法の開発につながると信じている。