日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: S4-3
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シンポジウム 4 ヒト iPS 細胞由来分化細胞を用いた医薬品安全性評価の課題と現状
ヒト iPS 細胞由来神経細胞は神経特異的有害反応を予測できるか
*佐藤 薫
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抄録

 ヒト iPS 細胞(human induced pluripotent stem cells: hiPSC)から分化誘導した神経細胞(hiPSC-ニューロン)は非臨床試験においてヒトニューロンの使用を可能とすることから、ヒト神経特異的有害反応の予測性向上に期待が寄せられている。中枢神経系において、神経細胞どうしはシナプスという構造で接合し神経回路を組み上げている。シナプスは、特定条件で持続的に興奮性神経伝達物質グルタミン酸の放出確率上昇などの伝達効率の変化=シナプス可塑性を誘導するマシナリーがあり、これが記憶・学習といった高次中枢神経機能の基盤となっている。その一方で、シナプス可塑性に関わる NMDA 型グルタミン酸受容体は過剰なグルタミン酸刺激によって引き起こされる興奮毒性の原因となっている。神経特異的な毒性メカニズムである興奮毒性は、実は非常に多くの神経障害に関わっている。従って、シナプス機能さらには神経回路機能を再現したhiPSC-ニューロン in vitro 試験系を実現することによって、神経特異的有害反応さらには高次中枢神経機能に対する有害反応を初期的・高効率にとらえられる可能性がある。我々はこのような背景をふまえ、アカデミア、hiPSC メーカー、製薬企業の協力を得、国内外で入手可能な hiPSC-ニューロンを集める体制を整えた。また、神経回路形成に至るどのステージまで機能分化がすすむかという点について共通パラメーターによって比較可能な標準プロトコルを確立した。このプロトコルに従い種々の hiPSC-ニューロンの機能分化到達度データを蓄積している。本シンポジウムでは、データの一部を紹介し、hiPSC-ニューロンによる神経特異的有害反応の予測可能性について考察する。また、現状での問題点について整理・確認し、今後目指すべき方向性についても議論する。

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© 2014 日本毒性学会
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