日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: W3-1
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ワークショップ 3 安全性評価を支える薬物動態試験のあり方
医薬品開発におけるヒト代謝物研究の役割
*山崎 浩史
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抄録
 この約10年間医薬品の安全性に関して、医薬品代謝物の重要性が産官学で議論されてきた。薬剤性肝障害を回避するため、放射性標識医薬品と生体タンパク質との共有結合量の閾値が提唱されている。米国では成人肝障害の約半数は薬物性であるとする調査が2008年に報告された。同年US FDAは医薬品代謝物の安全性試験に関する産業界向けのガイダンスを最終化した。実験動物では安全な医薬候補品が、ヒトで予想し難い毒性を発揮した事例を研究し、ヒトで生成される特異的代謝物や、ヒト血漿中代謝物で定常状態の曝露が毒性試験で確保されていない不均衡性代謝物を評価することが推奨されている。本ガイダンス発出から5年経過し、代謝物安全性試験で本当に必要な要件についての議論も展開されはじめる中、US NIHは、薬剤性肝障害に関する無料テキストベースwebsiteであるLiverTox データベースを2013年に発表した。
 ヒト型代謝物を評価するため、組換えヒト450、ヒト肝あるいはHepaRG細胞、さらにヒト肝移植キメラマウスなど、ヒト型代謝物の生成と評価のためのヒト酵素源および付加体の分離分析や低レベル放射能測定法の整備されてきた。そこで本発表では、動物とヒトとに種差の認められるP450 酸化反応の差異からヒトに特有な医薬品活性代謝物が生成し、多様なヒト肝タンパクと共有結合する可能性を示す事例を取り上げる。ヒト特異的代謝物の例示は難しいが、日本人特有の P450 2D6 の遺伝的多型に伴い、代謝物の種類に個人差が認められる場合があった。サリドマイドの芳香環水酸化に伴い、還元型グルタチオンと結合しうるヒト型反応性代謝物生成研究から、P450 3A4/5による肝代謝型クリアランス、酵素誘導や酵素活性促進を含めた薬物相互作用の評価を述べる。以上、ヒト特異的薬物性肝障害の研究に寄与しうるヒトP450機能解析事例を紹介する。
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© 2014 日本毒性学会
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