日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: W4-5
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ワークショップ 4 医薬品のがん原性評価に対する新たなアプローチ
化合物の薬理作用に起因するげっ歯類特異的な腫瘍発生
*福田 良
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抄録
医薬品のげっ歯類を用いた長期がん原性試験でみられる腫瘍の中には、その発生機序がげっ歯類に特異的でヒトへの外挿性が乏しいと考えられているものもある(例:PPARα作動薬による肝臓腫瘍、D2阻害薬による乳腺腫瘍、酸分泌抑制薬による胃カルチノイド腫瘍)。現在、医薬品のがん原性試験ガイドライン(ICH S1)の変更に向け、がん原性試験の結果及びヒトにおける発がんリスク評価を予測する「前向き調査」が日米欧の3極で進行中であるが、がん原性評価の証拠の重み付け(WOE)として、病理変化(過形成、肥大性変化等)、遺伝毒性の有無及びホルモン作用のNEG CARC Rat基準[1]に基づくがん原性陰性の予測に加え、薬理作用と腫瘍発生の関連性がWOEの一つとして重要視され、がん原性評価文書(CAD[2])の作成時には十分に留意することが求められている。日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 基礎研究部会のがん原性評価タスクフォースチームでは遺伝毒性を示さない医薬品のげっ歯類における発がん性に関する情報を収集し、げっ歯類特異的と考えられている約15種類の腫瘍について、誘発化合物の薬理及び毒性の公知情報と腫瘍の発生機序(MOA)に関した広範な文献検討を行っている。開発医薬品の薬理作用あるいは毒性学的変化に既知のMOAとの関連性がみられる場合は、ラットがん原性試験結果をより精度高く予測することが出来、さらに、そのMOAがげっ歯類特異的であるかの考察と、ヒトでの発がんリスクを的確に評価しうる科学的妥当性を示すことで、ラットがん原性試験の実施免除を求めるカテゴリー3aに分類することが可能であると考えられる。
本発表では、調査情報を基に、薬理作用からの発がん予測との観点から、げっ歯類特異的と考えられる腫瘍及びその機序、ヒトにおける発がんリスクに関して最新の事例を含めて概説したい。
[1]:Negative for endocrine, genotoxicity, and chronic study-associated histopathologic risk factors for carcinogenicity in the rat)、[2]:Carcinogenicity assessment document
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© 2014 日本毒性学会
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