日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: W5-2
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ワークショップ 5 食品関連化学物質のリスク評価上の問題点と今後の対応
核内受容体機能の種差と毒性
*山添 康
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抄録
 化学物質を投与した後、毒性が種を越えて共通に認められる時もあるが、むしろ実験動物種間で違いを観察することが多い。現在、毒性の種差は作用機序と体内動態の両面の違いに由来することがわかっているが、このような種差は一定せず、毒作用のタイプや物質群によっての出現の様態が異なる。このため毒作用のヒトへの外挿が問題となる。
 核内受容体については、代謝酵素の誘導機序の研究から肝における核内受容体の解析がスタートし、肝臓における核内受容体の多様性と機能の違いが分子レベルで明らかにされ、現在細胞機能との連関が盛んに解析されている。これらの背景には、肝で高発現しているPPARa, LXRa, PXRおよびCARのシグナル伝達を活性化する化学物質、例えばフェノバルビタールやクロフィブラートはげっ歯類に長期間投与すると造腫瘍性を示すこと、またこれら核内受容体の欠損マウスが非感受性であることがある。
またPXRやCARのリガンド結合部位の配列にはげっ歯類とヒトで違いがあるためこれら受容体を活性化する物質の作用には種差が認められている。この違いは甲状腺機能異常について知られているように、代謝酵素・トランスポーターの誘導を介した種選択的な体内動態異常を誘発し、結果的に臓器毒性発現の種差を生じる可能性がある。
 げっ歯類と異なり、フェノバルビタールやクロフィブラートはヒトでの使用経験からヒトへの発癌性はないとされている。核内受容体のどのような機能の種差がフェノバルビタールやクロフィブラート等の発癌性の違いを生じるのかについて、ヒト型受容体発現マウス等を用いて解析が進められている。
ここでは安全性評価における核内受容体機能の種差の取り扱いについて議論したい。
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© 2014 日本毒性学会
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