抄録
我々はES細胞から心筋への分化過程において、発生毒性物質との関連が示唆される複数のマーカー遺伝子を同定した(Suzuki et al., J.Toxicol.Sci.,2011)。また、マーカー遺伝子の中から心臓分化に重要な遺伝子であるHand1遺伝子に着目し、その発現量をルシフェラーゼ活性で簡便にモニター可能なマウス組換えES細胞株(Hand1-ES細胞)を用いたレポータージーンアッセイによる新規発生毒性予測試験法(Hand1- EST法)を報告した(Suzuki et al., Toxicol. Sci.,2011)。Hand1-ESTは複数の化合物の評価結果から、既存のESTと同等以上の予測性があり、短期間で多数の被験物質を評価可能なスクリーニングに適した方法である。一方、Hand1-ESTを含めた従来のESTは、代謝や胎盤移行性の影響を考慮できない等の点から、発生毒性の動物実験代替法としてのテストガイドライン化には改良の必要性が指摘されていた。そこで、我々はテストガイドライン化を視野に入れた精度向上を目的にHand1-EST法に改良を加え、新たな予測試験法であるHand1-Luc ESTを開発中である。本発表では、医薬品や化学品等を含む複数の物質で検証結果とともに、OECDテストガイドライン化を目的とした国際バリデーション試験の現状についても報告したい。