ヒト用医薬品の心室再分極遅延(QT間隔延長)の潜在的可能性を非臨床及び臨床で評価するためのICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)ガイドラインとして、S7B(ヒト用医薬品の心室再分極遅延(QT間隔延長)の潜在的可能性に関する非臨床的評価について)及びE14(非抗不整脈薬におけるQT/QTc間隔の延長と催不整脈作用の潜在的可能性に関する臨床的評価)が2005年に制定された以降、各製薬企業は両ガイドラインを踏まえた医薬品開発を進めている。このような状況下で、2013年7月にFDAが①2015年にThrough QT(臨床におけるQT/QTc評価)試験を止める(E14廃止)、②2016年にS7Bを改訂する、という目標を突然発表した。また同時に、CiPA (Comprehensive In vitro Proarrhythmia Assay) と名付けられた心臓安全性評価に関するNew Paradigmを提唱した。この発表は大きな反響を呼び、これを契機に両ガイドラインの廃止・改訂を視野に入れた議論や今後目指すべき心臓安全性評価に関する議論が活発化する様相を呈している。
この状況に関連するICHの動きとして、ICH-E14 IWG (Implementation Working Group)はE14ガイドラインのQ&A作成という活動を昨年で終え、今年から “Discussion Group”と名称を変えて、催不整脈評価に向けた新たな方法論構築等の検討・議論を開始する。具体的な検討・議論のポイントとして、1)IQ-CSRC QT working groupによるProspective Clinical Phase I StudyによるThrough QT試験結果の予測性の評価、2)In vitroデータからTQT試験結果を予測するMulti Ion Channel (MICE)アプローチに関する情報、3)その他、将来的に明らかにされる事項等が挙げられている。この検討・議論の先には、E14/S7Bの改訂の門戸を開くこと、あるいはS7Bガイドラインの補遺的なQ&Aを作成することが成果として期待されている。
本発表では、S7B及びE14両ガイドラインの最近の動向を交えながら、ICHで議論されていることを報告する。