日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: W8-2
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ワークショップ 8 医薬品の催不整脈作用のトランスレーショナルリサーチ
hERGの臨床QT延長リスク評価における現状と課題
*古谷 和春
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抄録

非抗不整脈薬によって心電図のQT間隔が延長し、時として torsades de pointes(TdP)のような致死的心室不整脈を誘発しうる。薬物性QT延長症候群と呼ばれる、ヒトの生命に関わるこの重大な副作用の発現は倫理的に臨床試験で評価することは出来ない。そのため医薬品開発における大きな問題となっている。医薬品による致死的不整脈発生の潜在的可能性の試験法に関しては、安全性薬理試験ガイドラインが日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)において制定されている。これに従い、ヒト心筋細胞活動電位の再分極に重要な役割を果す遅延性整流性カリウム電流の早い成分(IKr電流)、もしくはその電流を担うカリウムチャネル(hERGチャネル)に対する候補化合物の阻害作用が新薬探索の初期段階に検査されている(hERG試験)。hERG/IKr電流阻害作用陽性と判断されたため、安全性の面から開発中止になった医薬品候補物質が数多く存在する。このような背景のもと、本講演では、小分子化合物によるhERGチャネル機能制御のメカニズムと、その制御が薬物治療効果や副作用にどのように関わってくるかについて我々の最近の研究成果を紹介する。それにより医薬品がhERGチャネルを阻害するからといって必ずしも催不整脈リスクが高いとは言えない原因を説明する。さらに、非臨床のhERG試験から臨床QT延長リスクを評価する現状と課題を説明する。そして医薬品の安全性薬理試験において、hERGチャネルやその他のイオンチャネル・トランスポーターに対する作用に関するデータのヒト催不整脈性評価への橋渡しをどのように行えばよいかに関して現在の議論を整理する。

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© 2014 日本毒性学会
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