日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: JH-6
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就職活動支援プログラム 安全性研究の現場紹介 (それぞれの職場で求められる専門性の向上と必要なコミュニケーション能力)
受託機関で求められる専門性と必要なコミュニケーション能力
*黒岩 有一
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抄録
安全性受託機関(非臨床CRO)は、顧客である製薬企業、化学メーカー、大学発ベンチャーなどから委託を受け、創薬研究や非臨床安全性試験を実施することを事業内容としている。非臨床安全性試験には、一般毒性、がん原性、遺伝毒性、生殖発生毒性、安全性薬理、免疫毒性、光安全性試験などの多くの試験種が存在する。受託機関では、in vitroから動物試験までの多種多様な試験を、受託事業として効率的かつ高品質を維持しながら実施するために、多くの専門家や技術者が協力して働いている。毒性試験は、データの信頼性を確保するための実施基準(GLP)を遵守して実施される。GLPシステムでは、一試験に一人の試験責任者(主にトキシコロジスト)が任命され、この試験責任者が、各分野の専門家(毒性検査、眼科学検査、臨床検査、分析化学、統計解析など)を取りまとめている。これらの多くの技術者や専門家がそれぞれ円滑なコミュニケーションをとりながら試験を遂行する必要がある。特に、試験責任者には優れた技術的・専門的な背景だけでなく、コミュニケーションや問題解決能力などの管理調整技術にも長けている人物が求められる。質の高い受託試験とするためには、試験計画の段階から試験委託者側の毒性専門家との入念な打ち合わせも欠かせず、化合物の使用目的(医薬、化学、農薬、食品)によっても毒性評価は異なるため、試験委託者とのコミュニケーションが重要となる。近年では、複数場所試験として一部の試験操作を他社で実施するケースも一般的となり、他社の試験主任者との協調も必要になっている。単なる受託試験の実施機関ではなく、共同開発者としての意識を持って試験を行うことが毒性試験の質の向上につながることを付け加えたい。このように、受託機関の業務は試験責任者・社内・社外の専門家のチームプレーによる総合力で成り立っている。
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© 2015 日本毒性学会
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