抄録
サイズ、形状の異なる4種類の酸化ニッケルナノ粒子(US3352 (球形, 一次粒径18nm, 二次粒径 73~112 nm, US Research Nanomaterials, Inc.), NovaWireNi01 (繊維状, 径 ~20 nm長さ ~20 μm, Novarials Co.), I小粒径 (球形, 一次粒径300 nm, 二次粒径 1.8~2.0 μm, 日下レアメタル研究所), Ni(II) Oxide Nanopowder (球形, 一次粒径50 nm, 二次粒径 73~75 nm, Sigma-Aldrich))をF344ラットに気管内投与し、肺からのクリアランスおよびリンパ節等への移行を解析した。設定投与量は、0.67、2.0及び6.0 mg/kg bwとし、解剖を投与3日後、28日後及び91日後に行った。肺からのクリアランス速度定数は、NovaWireNi01 >> I小粒径 > Nanopowder > US3352であった。I小粒径では、用量依存的に肺クリアランス速度定数が減衰するオーバーロードが観察されたが、他の3材料では用量依存性は見られなかった。リンパ節への移行速度定数は、Nanopowder > US3352 > I小粒径 >> NovaWireNi01であった。NovaWireNi01以外の3材料では用量依存的にリンパ節への移行速度定数が増加していたが、NovaWireNi01では用量依存性は見られなかった。NovaWireNi01は、投与28日後及び91日後の肺内保持量が1%以下であったため、追加試験を行ったところ、24時間以内に投与量の30%近くが尿中に排泄されていることが分かり、体内で溶解して急速にクリアランスされていることが示唆された。本研究は経済産業省からの委託研究「ナノ材料の安全・安心確保のための国際先導的安全性評価技術の開発」による研究成果である。