抄録
【目的】血液学的検査ではEDTA-2K加血液を、血液生化学的検査では血清を用いて実施することが一般的である。しかしながら、マウスや幼若動物等の小型動物においては、採血可能な血液量が少ないことから、EDTA-2K加血液及び抗凝固剤処理をしない血液の両方を、同一個体から採取することは困難である。そのため、血液学的検査と血液生化学的検査を別個体で実施している。そこで、ヘパリンNa加血液及び血漿を用いた血液・血液生化学的検査を検討し、これまで実施してきたEDTA-2K加血液あるいは血清との比較を行った。
【材料および方法】イソフルラン麻酔下で、9、10及び11週齢のCrl:CD1(ICR)マウス雌雄各10例の腹大動脈から、ヘパリンNa加血液、EDTA-2K加血液あるいは抗凝固剤処理をしない血液を採取した。ヘパリンNa加血液及びその血漿を用いて血液・血液生化学的検査を、EDTA-2K加血液を用いて血液学的検査を、血清を用いて血液生化学的検査を実施した。
【結果】全週齢の血液学的検査において、ヘパリンNa加血液は、EDTA-2K加血液と比較して、雌雄で血小板の低値がみられた。また、血液生化学的検査においては、血清と比較して、雌雄の無機リンの有意な低値が、雌のアルブミン、A/G比、総コレステロール及びカリウムの有意な低値がみられた。
【まとめ】これまで実施してきた方法と比較して、血小板の自然凝集あるいは血球成分の血清への流出等の影響による差異がみられた。しかしながら、ヘパリンNa加血液及びその血漿を用いることにより、小型動物であっても全個体の血液学検査及び血液生化学的検査値が実施可能となる。したがって、各凝固剤の使用の有無により測定値に変化があることを理解した上で、血液・血液生化学的検査にヘパリンNa加血液及びその血漿を用いることは有益である。