日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-203
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一般演題 ポスター
ヒト肝細胞キメラマウスに由来する新鮮ヒト肝細胞(PXB-cells)の性状解析及びstatinの肝毒性評価への応用
*山崎 ちひろ柳 愛美吉実 康美景山 豊石田 雄二立野 知世
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抄録

新鮮ヒト肝細胞は、DMPKや安全性の様々な分野において、機能的に有用なツールと考えられているが、品質の良い肝細胞を安定的に入手する事は困難である。我々はこれまでに、cDNA-uPA/SCIDマウスをホストとして作製したヒト肝細胞キメラマウス(PXBマウス)から、効率良く接着性の高い新鮮ヒト肝細胞(PXB-cells)を分離する方法を確立している。今回我々は、このPXB-cellsの毒性評価試験への応用を念頭に、以下のin vitro評価試験を行った。異なる3ドナー由来の凍結ヒト肝細胞を移植して作製したPXBマウス(置換率80%以上)から、2段階コラゲナーゼ灌流法を用いてそれぞれPXB-cellsを回収し、I型コラーゲンコートプレート上で3週間培養を行いその性質を解析した。培養期間中を通して、PXB-cellsは高いviabilityとアルブミン産生能を維持していた。定量性PCR解析の結果から、培養3週目の薬物代謝酵素およびトランスポーターの遺伝子発現量は、分離直後の細胞に比べて、1)1/10以下に低下するもの(CYP1A2, OATP1B1等)、2)軽微な発現低下を示すもの(1/10以内、CYP1A1, BCRP等)、3)同等レベルを維持するもの(UGT1A1, MRP2等)の3タイプに分類された。特にCYP3A4は、mRNA発現および代謝活性共に分離直後と同等レベルであった。免疫染色やMRP2阻害剤(cyclosporin)の添加実験の結果から、胆汁排泄型のトランスポーターであるMRP2は、培養7日目以降の毛細胆管の周囲に局在しており、MRP2の特異的基質であるCDFの毛細胆管への排泄が確認された。更にPXB-cellsを用いて、HMG-CoA還元酵素阻害剤であるstatinの肝毒性を検討した。その結果、MRP2の活性阻害や他の薬剤との併用によって、statinの肝毒性が変化する事が示された。

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© 2015 日本毒性学会
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