日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-21
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優秀研究発表 ポスター
マウスdextran sulfate sodium(DSS)誘発大腸炎におけるA kinase anchor protein 13(Akap13)発現の粘膜修復応答への関与の可能性
*寒川 祐見吉田 敏則阿部 一田中 猛丸山 潔宮下 泰志中村 美智米澤 豊小山 直美橋本 和人林 新茂渋谷 淳
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抄録
【目的】炎症性腸疾患(IBD)患者数は増加傾向にあり、多くの患者で大腸がんに進展することが報告されている。我々はIBDと大腸がんの予防及び治療に効果的な物質の探索を目的に研究を行っており、これまでに抗酸化剤の酵素処理イソクエルシトリン(EMIQ)及びα-リポ酸(ALA)、血小板凝集抑制剤のシロスタゾール(CZ)がDSS誘発大腸炎を抑制することを報告している。今回、expression microarray解析により炎症期において3剤で共通して発現低下が認められたAkap13と粘膜修復の関連性について検討した。【方法】5週齢の雌性BALB/cマウスに4%DSSを飲水投与して大腸炎を誘発した。大腸炎誘発後に1.5%EMIQ、0.2%ALA及び0.3%CZを混餌投与して、混餌投与開始後1週間(W1)及び2週間(W2)で剖検を行った。Akap13の経時的な遺伝子発現変動及び蛋白局在について、無処置群、DSS飲水終了時剖検群(W0)及び各剤混餌投与群(W1及びW2)で比較した。【結果】Akap13のmRNAはW0で一過性に高発現し、W1及びW2では対照群と同程度で3剤投与群間に差はなかった。免疫染色陽性反応と病理組織学的変化との関連性を検討したところ、無処置群では表層粘膜上皮に軽度の陽性反応が認められ、W0では粘膜上皮の変性・脱落と伴に、免疫染色陽性反応が変性部位の粘膜表層から陰窩深部に拡大した。W1及びW2では扁平な再生表層粘膜上皮及び再生陰窩がそれぞれ主として観察され、3剤投与により粘膜修復が促進される傾向にあった。免疫染色陽性反応は再生表層粘膜上皮で強陽性を示し、再生陰窩では陰性であった。【考察】Akap13はRhoキナーゼを活性化し、細胞骨格制御により細胞の接着や移動を調整するとされ、マウス大腸炎モデルにおける粘膜修復の初期応答分子として、粘膜の再生促進作用に関与している可能性が示唆された。
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© 2015 日本毒性学会
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