日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-228
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一般演題 ポスター
肝毒性物質評価に対応した新規三次元細胞培養法の開発
*安部 菜月大谷 彩子金木 達朗猿橋 康一郎西野 泰斗
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抄録
三次元細胞培養は人工的なプラスチックシャーレ上での単層培養と比較して、生体内に近い環境を再現し、生理的な細胞応答性を引き出す培養方法として期待されている。しかしながら、既存の様々な三次元培養法は操作の煩雑さや精度管理の難しさを課題として残している。今回我々は、これらの課題を解決するため各種ポリマーを用いた培養系を検討し、培地への添加により細胞の均一な分散を可能とするポリマーFP001を見出した。FP001含有培地は水とほぼ同等の粘性であるが、FP001が構成する凝集構造により、単細胞及びスフェアが本培地中で均一に分散された状態で維持されていた。そこでFP001含有培地を用いて低接着条件での細胞の増殖や形態、薬剤感受性などに与える影響を観察した。その結果、ヒト肺胞基底上皮腺がん由来細胞A549やヒト肝がん由来細胞HepG2、ヒト卵巣がん由来細胞SKOV3などの各種がん細胞株の培養が可能であり、いずれの場合も、FP001(-)群と比較してスフェアが均一に分散され、細胞増殖性が改善していた。またFP001含有培地と低接着マルチウェルプレートを組み合わせてHepG2細胞を5日間培養したところ、スフェアがウェル内で均一に分散した状態で形成され、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製Cellomics ArrayScan® VTI HCS Readerによる解析から、形成されたスフェアの直径は約60μmであった。本法により培養された直径60μmのHepG2スフェアは、AmiodaroneやDiclofenacなどの肝毒性物質の添加により濃度依存的に減少し、従来の2次元環境下で培養された細胞よりも高い感受性を示した。以上より、FP001含有培地は肝毒性物質等の薬剤のハイコンテンツスクリーニングに適用可能な三次元培養を実現する新たな細胞培養技術として、広範な応用が期待される。
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© 2015 日本毒性学会
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