日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-43
会議情報

優秀研究発表 ポスター
HepaRG細胞および免疫・炎症関連遺伝子マーカーを用いた薬剤性肝障害リスク評価系の構築
*織田 進吾松尾 研太朗深見 達基中島 美紀横井 毅
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【背景・目的】薬剤性肝障害 (DILI) を非臨床で予測するために、肝実質細胞におけるパラメーター (細胞死、共有結合量、ミトコンドリア障害) を指標とした試験系が発案されてきたが、十分な予測性を得られておらず、新たな角度からのDILI評価系の構築が求められている。反応性代謝物と免疫反応の活性化はDILIの発症に重要であることが示唆されている。本研究では、in vitro DILI予測評価系として、薬物代謝反応を考慮し、免疫および炎症関連遺伝子発現量をマーカーとすることの有用性について検証した。
【方法】96種類の薬物 (100 µMを上限とし、HL-60の生存率が70%を下回らない濃度) をHepG2または分化HepaRG細胞に24時間処置し、その培養上清をHL-60細胞に暴露させた。24時間後、HL-60細胞よりtotal RNAを抽出し、qPCRによりMCP-1, S100A9, IL-1B, IL-8及びTNF mRNA発現量を測定した。各mRNA発現量のDILI予測マーカーとしての有用性はROC曲線に基づき評価した。さらに、S100A9, IL-1B及びIL-8発現量において、各々cut-off値以上を示す薬剤にはscore (+1点) を与え、3遺伝子におけるscoreの総和値 (immune inducible score, IIS) を算出し、その値のDILI予測性も同様に評価した。各薬物の臨床DILIリスクはFDAのLiver Toxicity Knowledge Base Benchmark Datasetを用いた。
【結果・考察】HepaRG培養上清を暴露させたHL-60 (HepaRG/HL-60) におけるIL-8発現量のROC-AUCは最も高値 (0.758) であり、次いでHepaRG/HL-60におけるIL-1B (AUC-ROC = 0.726) による予測性が良好であった。いずれの遺伝子においてもHepaRG培養上清を暴露させた方がHepG2よりもAUC-ROCが高値傾向にあることから、薬物代謝を考慮することで予測性が向上することが示唆された。HepG2とHepaRGのIISの総和値によるAUC-ROCは高値 (0.819) であり、複数のパラメーターを考慮することでDILIの予測性が向上することが明らかとなった。
【結論】DILIのin vitro予測試験系として、免疫および炎症関連遺伝子発現量をマーカーとした試験系の可能性を示した。
著者関連情報
© 2015 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top