日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: S14-4
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シンポジウム14 毒性シミュレーションおよび毒性ビッグデータマイニングの創薬への活用
心臓シミュレータを用いた薬剤の催不整脈リスク評価
*岡田 純一吉永 貴志黒川 洵子鷲尾 巧深瀬 広幸杉山 篤古川 哲史澤田 光平杉浦 清了久田 俊明
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抄録
創薬の際には,薬剤が心臓に与える副作用を評価する事が不可欠である.特にTorsade de Pointes (TdP)は致死性不整脈発展する可能性のある危険な不整脈であり,薬剤がTdP発生リスクに与える影響を評価する事がICH-S7B, ICH-E14により義務付けられている.TdPは一般にIkr電流の阻害によって心筋細胞に発生するEarly Afterdepolarization (EAD)が原因と考えられており,心電図QT間隔延長を正確に測定するthorough QT試験が薬剤のTdP発生リスク評価に用いられてきた.しかし,thorough QT試験は非常に高コストであり,またQT間隔延長する薬剤の中にもTdP発生リスクを上昇させない薬剤の存在する事から擬陽性により有効な薬剤が実用化への道を絶たれている可能性が指摘されているため,より高精度で安価な評価法の開発が期待されている.
心臓シミュレータ(UT-heart)は,筆者を含む研究チーム(東京大学大学院新領域創成科学研究科・久田俊明教授,杉浦清了教授,鷲尾巧准教授)によって開発された有限要素法に基づく三次元心臓モデルである.UT-heartの心電図解析では,心臓とプルキンエ線維の各節点(約2200万個)にパラメータの異なる心筋細胞電気生理モデルを埋め込み,各要素に異なる線維方向を設定し,バイドメインモデルを支配方程式とする興奮伝播解析を行なう.一方,胸郭は電気伝導場としてモデル化し,主要臓器に異なる電気伝導率を与える.そして,心臓モデル胸郭モデル間の電流の流出入を適切な頻度で考慮する事により高速で高精度な大規模計算を可能にした.UT-Heartを用いれば,薬剤による個々の細胞のイオンチャネル,膜電位の変化から心電図の間のマルチスケールに亘る因果関係を明らかにする事が可能となる.
本報告では,UT-Heartを用いて薬剤の催不整脈リスク評価を行なった結果を報告する.
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© 2015 日本毒性学会
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