日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: EL2
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教育講演
日本免疫毒性学会合同教育講演: 環境化学物質によるアレルギー悪化
*高野 裕久
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抄録

近年、気管支喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー等のアレルギーが急増し、その増加・悪化の主因として環境要因の変化が重要と考えられている。居住環境、衛生環境、食環境、水・土壌・大気環境等、多くの環境要因の変化の重要性が指摘されているが、これらの背景には化学物質の増加に代表される環境汚染の蔓延という問題が潜在している。
本講演では、環境汚染物質とアレルギー疾患の増加・悪化の関連について、環境化学物質に焦点を当て、我々のこれまでの知見を中心に紹介する。
臨床的には、いわゆるシックハウス症候群において、室内汚染化学物質によるアレルギー疾患の再燃や悪化がしばしば経験される。また、実験的にも、環境汚染物質は、種々のアレルギー疾患を悪化させうる。例えば、粒子と莫大な数の化学物質の集合体であるディーゼル排気微粒子、また、黄砂、ナノ粒子、ナノチューブ等の粒子状、繊維状物質は気管支喘息を悪化させる。一方、ディーゼル排気微粒子に含まれる悪化要因としては、キノン類やベンツピレンをはじめとする脂溶性化学物質が重要である。加えて、プラスチック製品の可塑剤として汎用されているフタル酸エステル類、や農薬等の環境化学物質も、アトピー性皮膚炎を悪化させる。
アレルギー悪化メカニズムとしては、総じて、抗原提示細胞の局所における増加や活性化、Th2反応の亢進等が重要であることを示唆する知見が多い。これらの物質の中には、in vitroにおいて、抗原提示細胞におけるCD86、DEC205やケモカインレセプター、脾細胞におけるTCR発現、IL-4産生、抗原刺激による細胞増殖の増強をきたすものもあり、悪化機構の解明と共にスクリーニング指標としても重要である。今後、アレルギーを制圧するためには、環境化学物質をはじめとする環境汚染物質対策も必須となろう。

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