抄録
日本では1997年以降、野生生物の繁殖異常や人の生殖機能への悪影響は、環境中の人工合成化学物質が内分泌をかく乱することによって引き起こされるとの懸念が大きな社会問題となった。これには、1996年に発刊されたOur Stolen Future (T. Colbornら;邦訳「奪われし未来(1997)」の影響が大きい。1998年には環境省により内分泌かく乱作用が疑われる物質67物質がリストされ“SPEED98”の国家事業として開始された。この事業は“ExTEND2005”, “EXTEND2010”として継続され、今後に引き継がれることになっている。
この講演では、以下の項目を中心に、内分泌かく乱化学物質(「環境ホルモン」)問題について毒性学の観点から概説する。
1. 野生生物と人における内分泌かく乱の実態
2. 内分泌かく乱作用の定義と検出系の開発
3. 内分泌かく乱作用の特徴
・低用量問題(逆U字の量・反応関係)
・複合曝露
・閾値
・動物試験結果の再現性とGLP
・エピジェネティクス・多世代影響
4. 毒性試験系と内分泌かく乱化学物質