日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-12
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一般演題 口演
LC/MS及びヒト樹状細胞を用いた抗体医薬品の潜在性T細胞エピトープの検出
*久保 千代美関口 修央伊藤 俊輔生野 達也矢野 まり子三島 雅之井上 智彰田保 允康千葉 修一
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抄録
【目的】抗体医薬品は,生体に免疫応答を引き起こす活性(免疫原性)によって,患者に薬理効果の減弱,悪心,嘔気,アナフィラキシーなどの有害事象を導く場合がある。このような免疫原性を非臨床研究段階で予測することは医薬品を投与された患者の安全確保の面で重要である。抗体医薬品の免疫原性の原因となりうるT-細胞エピトープを同定する方法として,in silico予測法,HLA-binding assay法並びに液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)がある。MAPPs(MHC-Associated Peptide Proteomics)は,樹状細胞内での抗原プロセシングを経てHLA-DR分子に結合した抗原由来のペプチド断片について,ペプチドの配列をLC/MSを用いて同定する技術であり,実際の抗原提示機構に近い状態でペプチド断片を検出できる点で他の方法より優れていると考えられている。今回,我々は,MAPPsを用いて,高い免疫原性をもつ抗体医薬品と報告されているInfliximabから潜在性T-細胞エピトープの検出を試みた。
【方法】Infliximabを添加した4名の単球由来の成熟樹状細胞からHLA-DR分子及びHLA-DR結合性ペプチドの複合体を抗HLA-DR抗体を用いた免疫沈降法により精製した。HLA-DR-ペプチド複合体から酸でペプチドを溶出し,LC/MSを用いてペプチドの配列を分析した。
【結果及び考察】MAPPsによってInfliximabのvariable region及びconstant regionのどちらからも数種類のペプチドが同定された。同定されたペプチドはIEDBデーターベース検索からHLA-DR分子への結合性が高いことが示されたため,T-細胞エピトープになりうると考えられた。MAPPsは抗体医薬品から抗原プロセシングを受けた天然の潜在性T細胞エピトープを見つける最適な方法の一つと考えられる。
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© 2016 日本毒性学会
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