日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-19
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一般演題 口演
新規GluR2発現減少化学物質カルボフランによる神経毒性評価
*梅田 香苗古武 弥一郎杉山 千尋宮良 政嗣石田 慶士佐能 正剛太田 茂
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抄録
【目的】当研究室では、AMPA受容体を構成するサブユニットのうち、Ca2+透過性を決定するGluR2が数種類の化学物質曝露により減少し、これにより神経細胞脆弱化が引き起こされることを明らかにした。さらにAlphaLISA®を応用してin vitro GluR2発現簡便評価系を構築した。本研究ではこの評価系を用いて、GluR2発現減少を惹起する環境化学物質のスクリーニングおよび見出された化学物質による神経毒性評価を行った。
【方法】ラット大脳皮質初代培養神経細胞に評価化学物質を9日間曝露し評価した。タンパク質発現量測定はAlphaLISA®およびウェスタンブロットにより、細胞膜上のGluR2発現量は免疫染色により、細胞内Ca2+流入量はfura-2 AMの測定により、細胞生存率はトリパンブルー法により、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)活性はエルマン法により測定した。
【結果・考察】43種類の化学物質をスクリーニングした結果、6種類の化学物質が新規GluR2発現減少化学物質として見出された。それらのうち、カルボフランはAMPA受容体サブユニットのうちGluR2を特異的に減少させ、その作用は0.1 µMから引き起こされた。また、GluR2発現減少はAMPA受容体が機能する細胞膜においても認められた。さらに、10 µMカルボフラン曝露により、GluR2発現減少を反映して、グルタミン酸刺激によるCa2+流入量増加およびそれに伴う神経細胞死が認められた。一方、カルボフランの既知の作用であるAChE阻害作用を測定した結果、この作用はGluR2発現減少が引き起こされる濃度よりも高濃度において惹起されていた。これらのことから、スクリーニングの結果見出されたカルボフランが、GluR2発現減少を介して神経細胞脆弱化させることが明らかとなった。これにより本評価系を用いた神経毒性試験の重要性が示唆された。
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© 2016 日本毒性学会
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