日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-28
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一般演題 口演
沖縄県産植物芭蕉(バショウ、Musa basjoo)抽出物のヒト大腸がん細胞に対する細胞毒性
*松本 晴年深町 勝巳二口 充酒々井 眞澄
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抄録
 これまでに我々はin vitroおよびin vivoにて沖縄県産植物のがん細胞へのcytotoxicityを明らかにした(Asian Pac J Cancer Prev 6: 353-358、 2005、 Eur J Cancer Prev 14: 101-105、 2005、 Cancer Lett 205: 133-141、 2004)。天然物質を利用することで正常細胞への低毒性を期待し沖縄県産植物芭蕉(Musa basjoo)の葉の2種類の抽出物(アセトンおよびメタノール抽出)を用いてヒト大腸がん細胞株に対するcytotoxicityとその機序を調べた。それぞれの抽出物をヒト大腸がん細胞株HT29およびHCT116にばく露し、コロニーアッセイ、MTTアッセイにてcytotoxicityを検討した。Cytotoxicityの程度はIC50値(50%増殖抑制率)にて判定した。アポトーシス(subG1 population)および細胞周期G1 arrest誘導能をフローサイトメトリー、またタンパク発現レベルへの影響をウェスタンブロット法にて検討した。HT29およびHCT116でのIC50はそれぞれ140 µg/mL(アセトン抽出物)、190 µg/mL(メタノール抽出物)および80 µg/mL(アセトン抽出物)、140 µg/mL(メタノール抽出物)であった。HT29では、アセトン抽出物(100 µg/mL)のばく露によりcontrol(DMSO処理)と比較してG1期が5.3%有意に上昇し、これに伴ってG2/M期が減少した。subG1 populationは見られなかった。HT29およびHCT116では、アセトン抽出物のばく露によりcyclin D1タンパク発現の濃度依存性の減少が見られた。これらの結果より、芭蕉抽出物にはcytotoxicityを発揮する物質が含まれることが分かった。個体レベルでの効果は不明であるため、化学発がん剤azoxymethane(AOM)を投与してラット大腸粘膜に誘発される前がん病変(aberrant crypt foci、異常陰窩巣)の発生抑制効果,およびHT29細胞を移植して増殖したヌードマウスの腫瘍縮小効果を検証する。さらに、主な臓器への毒性を検討する。
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© 2016 日本毒性学会
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