日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-33
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一般演題 口演
気管内注入試験と吸入暴露試験による酸化亜鉛ナノ粒子の炎症能の検討
*森本 泰夫和泉 弘人吉浦 由貴子藤嶋 けい大藪 貴子明星 敏彦島田 学久保 優山本 和弘北島 信一
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抄録

酸化亜鉛ナノ粒子は、可視光線の透明化と紫外線の遮断能が強いことからサンスクリーン剤などの化粧品,LEDや太陽光発電パネル、UV反射用コーティング、抗菌剤、消臭剤など様々な用途における使用が期待されているが、生体影響は不明である。我々は、酸化亜鉛ナノ粒子の生体影響を検討するために、吸入暴露試験と気管内注入試験を行い、肺炎症をエンドポイントして評価を行った。吸入暴露試験に関しては、F344ラットに低濃度(2.11 mg/m3)または高濃度(10.4 mg/m3)の暴露濃度で4週間(6時間/日、5日/週)の吸入暴露を行った。1次粒子径は、35nm程度であった。曝露終了後、3日、1ヶ月後に解剖し、気管支肺胞洗浄液(BALF)の細胞解析を行った。一方、気管内注入試験に関しては、吸入暴露試験で使用した同一の酸化亜鉛懸濁液を用いてラットに0.2mg、1mg/ratの用量で気管内注入を行った。注入終了後、3日、1週間、1ヶ月、3ヶ月後に解剖し、BALFの細胞解析を行い、吸入暴露試験と同様にBALFの細胞解析を行った。
吸入暴露試験では、酸化亜鉛は3日目の高濃度でBALFの好中球が増加したが、一過性であった。気管内注入試験では、注入1週間後までBALFの好中球数の増加を認めたが、その後陰性対照レベルまで低下した。これらの結果を、以前行った酸化ニッケルナノ粒子、二酸化チタンナノ粒子の炎症持続性を用いて比較すると、酸化亜鉛による炎症は、炎症能が低い二酸化チタンナノ粒子の概ね同じレベルであった。以上より、酸化亜鉛ナノ粒子の炎症能は、低いことが示唆された。今後は、サイトカインのデータを含め総合的に判断する。
本研究は経済産業省からの委託研究「ナノ材料の安全・安心確保のための国際先導的安全性評価技術の開発」による。

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