日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-34
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一般演題 口演
好中球が非晶質ナノシリカ誘発性の胎盤障害におよぼす影響解析
*東阪 和馬岩原 有希中島 彰俊長野 一也齋藤 滋吉岡 靖雄堤 康央
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抄録

近年、ナノテクノロジーの発展に伴い、少なくとも1次元の大きさが100 nm以下に制御されたナノマテリアル(NM)の開発研究が進展している。しかし、NM特有の有用機能が、二面性を呈してしまい、我々の意図しない生体影響を誘発する可能性が指摘されており、科学的根拠に基づいたNMの安全性情報を幅広く収集することが必要不可欠である。このような背景のもと、これまでに我々は、粒子径70 nmの非晶質ナノシリカ(nSP70)が、その物性によっては、胎仔発育不全をはじめとする生殖毒性を誘発する可能性を見出してきた。一方で、これら生殖毒性の発現機序については殆ど明らかとされていないのが現状である。そこで本研究では、nSP70曝露による生殖毒性の発現機序の一端を明らかとすることを目的に、生体防御機構に重要な好中球の役割との連関解析を図った。まず、妊娠マウスにおけるnSP70投与後の末梢血好中球画分の割合を解析したところ、nSP70を投与することで、末梢血中の好中球画分の割合が有意に増加することが示された。そこで、好中球の増加が、nSP70投与による妊娠障害の誘発におよぼす影響を解析する目的で、妊娠15日目の母体マウスに好中球特異的な中和抗体である抗Ly-6G抗体を前処置した後、妊娠16日目にnSP70を尾静脈より単回投与した。その結果、抗Ly-6G抗体を前処置したnSP70投与群では、nSP70単独投与群と比較し、母体体重の低下、および子宮中に含まれる胎仔数の減少が亢進することが示された。さらに、好中球が妊娠維持における胎盤機能へおよぼす影響を評価した結果、好中球をdepletionすることで、nSP70投与による胎盤傷害の亢進につながることが示唆された。以上の結果から、nSP70投与による母体への影響、特に、妊娠維持の破綻に対し、好中球が抑制的に働く可能性が示された。現在、好中球の存在下、非存在下におけるnSP70の血中、胎盤での定量的な動態情報の収集が今後の検討課題であると考え、現在進行形で解析を進めている。

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