日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-36
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一般演題 口演
アジュバントに着目した金属ナノ粒子投与による金属アレルギー様症状の発症機序解析
*和泉 夏実吉岡 靖雄平井 敏郎半田 貴之衛藤 舜一青山 道彦長野 一也東阪 和馬堤 康央
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抄録

金属アレルギーは、金属から溶出したイオンが発症原因だと考えられているものの、単に実験動物にイオンを投与するのみでは病態は誘導されにくいことから、未知の発症要因の存在が議論されている。このような中、我々は、金属アレルギーの発症機序解明に向け、金属から自然生成するナノ粒子に着目し、ナノ粒子が未知の発症要因である可能性について検討を進めてきた。本検討を通じ、粒子径10 nmの銀ナノ粒子(nAg10)を、アジュバントであるLPSと共に感作投与しておくことで、効率よく銀イオンに対する免疫応答が誘導され、病態が発症することを明らかとし、新たな金属アレルギーモデルの作製に成功している。しかし、本モデルの発症機序は明らかとなっていないことから、本検討では、アジュバントとして用いたLPSの必要性と他のアジュバントを用いた際の感作性に関して評価した。まず、LPSの必要性を調べるために、nAg10のみを感作投与した際の病態の発症の有無を検討した。その結果、nAg10のみの感作投与では病態は発症せず、感作の成立にはLPSが必要であることが示唆された。次に、LPS以外のアジュバントを用いた際の感作の成立の有無について検討した。TLR9のリガンドであるCpG DNAについて、IL-6を強く誘導するKタイプとIFN-αを強く誘導するDタイプの二種類を用いて、感作投与した際の発症の有無を評価した。その結果、Kタイプを用いた場合のみ病態が発症し、感作が成立した可能性が示された。現在、感作が成立するLPSやCpG DNAのKタイプを用いた場合に誘導される分子が、例えば、本モデルの発症に重要であることを既に明らかとしているTh17細胞への分化を促すなど、発症に関与している可能性があると考えている。今後、これらを用いた際に起こる反応の共通項を探すことで、感作が成立する際に必要となる分子を探索すると共に、分子メカニズムを明らかにすることで、発症機序の解明を目指したいと考えている。

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