日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-37
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一般演題 口演
細胞間隙に着目した、ナノマテリアルの胎盤関門透過性へ与える影響の評価
*清水 雄貴東阪 和馬青山 道彦難波 佑貴泉 雅大長野 一也吉岡 靖雄堤 康央
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抄録

100 nm以下の素材であるナノマテリアル(NM)は、医薬品や食品、化粧品など、身の回りの多様な製品に汎用されている。そのため、老若男女を問わずNMに曝露している現状を鑑みると、様々なライフステージを加味した安全性評価が急務である。特に、胎児や乳幼児は化学物質への感受性が成人と比較して高いため、妊娠期・授乳期に着目した安全性評価は最優先課題となっている。これまでに、様々な物性のNMが、胎盤関門を突破し得ることが明らかとされているが、胎盤透過メカニズムを含む胎盤関門におけるNMの動態特性は明らかとなっておらず、その解明が期待されている。本観点から我々は、昨年の本会において、粒子径10 nmの金ナノ粒子(nAu10)の投与が、胎盤透過性の低いFITC-dextranの胎盤透過性を向上し得ることを報告した。近年、NMが細胞間隙を構成する分子に作用し、生体バリアを緩めることが明らかとされつつあることから、nAu10が胎盤関門の細胞間接着分子に作用し、nAu10自身の関門通過を容易にした可能性が考えられた。そこで本検討では、nAu10曝露による胎盤透過性の亢進について精査する目的で、妊娠15日のBALB/cマウスにPBSまたはnAu10を前投与した後に、粒子径5 nmの白金ナノ粒子(nPt5)を投与し、nPt5の胎盤透過性の変化を評価した。その結果、nAu10の前投与によらず、nPt5の胎盤通過量に変化は認められなかった。また、細胞間接着因子に対する影響を評価する目的で、胎盤関門におけるE-cadherinの発現量をWestern Blottingにより比較解析したところ、nAu10前投与の有無による発現量の変化が認められないことが示された。以上の結果から、nAu10を前投与のよっても、NMの胎盤透過性は影響を受けないこと、また、nAu10が胎盤関門のE-cadherinに作用する可能性も低いことが示された。今後は、胎盤関門の透過性に関し、他の要因が関与している可能性を想定し検討を重ねていく。

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© 2016 日本毒性学会
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