日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-151
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一般演題 ポスター
エアリキッド培養法を用いた海馬オルガノイドの作成
*臼井 達哉櫻井 優川崎 秀吉大浜 剛佐藤 晃一
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抄録
【背景】海馬歯状回はニューロン新生が活発な部位であり、歯状回の顆粒細胞下帯においてニューロンが新生され、記憶と学習を制御することが知られている。また、これまでニューロン新生の異常がアルツハイマー病や精神分裂症の一因となることが報告されている。しかし、従来の組織培養法では、海馬歯状回における神経幹細胞の分化過程を観察することは困難であり、新たな実験モデルの開発が求められている。
【目的】近年、生体内の組織構造をin vitroの系で長期的に観察できるツールとして、三次元細胞培養(オルガノイド)法が注目されている。そこで本研究では新規三次元培養法であるエアリキッド培養法を用いて、神経幹細胞から海馬オルガノイドを作成し、ニューロン新生異常を検討する新たな実験モデルを確立する。
【方法】1-2週齢のC57BL/6マウスの海馬組織を摘出し、Wnt, Nogin, R-spondinなどを含む神経幹細胞の維持に適した培地を用いて三次元培養を行った。さらに培養1週間後にBrain derived neurotrophic factor (BDNF)またはinsulin-like growth factor (IGF)-1を処置した。組織摘出直後、培養1週間後、BDNFあるいはIGF-1処置1- 2週間後の切片を作成し、神経幹細胞マーカーおよび成熟神経細胞マーカーの発現を免疫組織化学染色により観察した。
【結果・考察】培養1週間後の標本において、成熟神経細胞マーカーNeuN陽性細胞の減少とオルガノイド形成が観察された。IGF-1処置1週間後の標本では、神経幹細胞マーカーNestinおよび Glial fibrillary acidic protein (GFAP)の発現が確認された。以上の結果から、本研究で確立したエアリキッド法を用いた海馬オルガノイド三次元培養法は、ニューロン新生研究の新規ツールとなる可能性が示唆された。
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© 2016 日本毒性学会
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