日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-156
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マクロファージはヌクレオリンを介してアミロイドβを貪食する
*藤原 泰之来栖 花菜高橋 勉三木 雄一
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抄録

【目的】マクロファージは、外来性異物や異物的自己成分を認識し、除去する機能を有する貪食細胞である。我々はこれまでに、多機能性タンパク質であるヌクレオリンがマクロファージ表面のスカベンジャーレセプターの一つとして機能し、変性タンパク質や変性LDL、アポトーシス細胞などを認識・除去することを明らかにしてきた。アミロイドβ(Aβ)は、神経変性疾患、特にアルツハイマー病の発症に深く関与するとされているが、脳血管壁にも沈着することが報告されている。本研究の目的は、マクロファージによるAβの認識・除去機能へのヌクレオリンの関与を明らかにすることである。
【方法】Aβは、monomer Aβ40、monomer Aβ42および線維化させたfibril Aβ40およびfibril Aβ42を用いた。各種Aβとリコンビナントヌクレオリン(rNUC)の結合能をsurface plasmon resonance(SPR)法により検討した。フローサイトメーターを用いて、蛍光標識した各種Aβとマクロファージとの結合性を測定した。また、ヌクレオリンアプタマーであるantineoplastic guanine rich oligonucleotide(AGRO)および抗ヌクレオリン抗体を用いた競合拮抗実験を行った。
【結果・考察】固定化したrNUCに対し、monomerおよびfibril Aβ40は結合しなかったが、monomerおよびfibril Aβ42は結合することが確認された。蛍光標識したmonomerおよびfibril Aβ42は腹腔マクロファージと濃度依存的に結合すること、これらの結合はAGROおよび抗ヌクレオリン抗体の共存により阻害されることが確認された。また、共焦点レーザー蛍光顕微鏡観察により、蛍光標識したmonomerおよびfibril Aβ42はマクロファージに貪食されることが観察されたが、その貪食作用は抗ヌクレオリン抗体によって有意に阻害された。以上より、マクロファージ表面のヌクレオリンは、Aβ40は認識しないが、monomer Aβ42およびfibril Aβ42の両方を取り込むレセプターとして機能していることが示唆された。

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