抄録
SD系ラット及びモルモットにおける光毒性反応を比較する為に、光毒性作用が認められている8-Methoxypsoralen(以下、8-MOP)を用いて、経皮及び経口投与による光毒性評価を実施した。
本試験では病態解析を実施するため通常の皮膚光毒性評価に加え、血液学的検査、血液生化学検査、皮膚重量測定及び皮膚の病理組織学的検査を実施した。なお、ラットについては皮膚からmRNAを抽出し、Real-time PCRを実施した。
結果、ラットとモルモットともに、皮膚反応観察において紫外線照射部位にのみ紅斑及び浮腫が認められ、8-MOPの光毒性を検出することが可能であった。また、血液を介して全身の皮膚へ8-MOPが分布したと考えられる経口投与群では、経皮投与群と比較して重度な皮膚炎症が認められた。血液学的検査及び血液生化学検査においては、皮膚炎症に関連したパラメータ変化が認められた。病理組織学的検査では、表皮に単細胞壊死が認められた後、修復反応を主体とする組織像に推移した。これらの反応はモルモットにおいて、より重度かつ早期に認められた。ラットの皮膚組織を用いて行ったReal-time PCRでは、経皮投与、経口投与ともに炎症関連遺伝子の発現増加が認められた。遺伝子の発現増加タイミングは、肉眼的な炎症性変化が認められた時点よりも早く、遺伝子発現から損傷部位への炎症性細胞動員までのタイムラグを反映したものと考えられた。
以上、ラットとモルモットにおける光毒性反応を比較した結果、モルモットで炎症が強く認められたが、皮膚反応、炎症による血液パラメータの変化及び皮膚の炎症変化に違いは認められなかった。したがって、反応強度では量的な違いはあるが、質的に本質的差異はなく、ラットを光毒性評価に用いる妥当性が確認された。