日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-170
会議情報

一般演題 ポスター
Monocyte chemotactic protein-1による単球/マクロファージ浸潤、遊走におけるレドックス感受性転写因子Nrf2の役割
*芦野 隆山本 雅之沼澤 聡
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
酸化ストレスは様々な疾患の引き金となるため、生体内には様々な抗酸化システムが機能している。その中でも細胞内レドックス変化に鋭敏に応答し、各種抗酸化酵素の遺伝子発現を統合的に制御する転写因子Nrf2は、酸化ストレス防御の中心的な役割を担っている。虚血性心疾患の原因となる動脈硬化は、その発症と進展の様々な段階において酸化ストレスが影響していることが明らかになっている。動脈硬化は、血管傷害部位への単球/マクロファージの接着、浸潤、遊走が発症初期に起こることで進行すると示唆されている。そこで本研究では、まだ明らかにされていないNrf2の血管傷害初期における単球/マクロファージの浸潤、遊走における役割について検討を行った。マウス大腿動脈にワイヤー傷害を施し、7日後の血管組織をNrf2抗体とF4/80抗体で蛍光免疫染色したところ、マクロファージにおいてNrf2の強発現が見られた。また、Nrf2遺伝子欠損(KO)マウスでは、Wild-type (WT)と比較して、血管傷害後の新生内膜形成部位におけるマクロファージ数の有意な増加が見られた。そこで、この傷害血管における単球/マクロファージの走化性に関与するMonocyte chemotactic protein-1 (MCP-1)の遺伝子発現をリアルタイムPCRで確認したところ有意な増加が見られた。しかし、WTとNrf2-KOマウスにMCP-1発現の有意な差は見られなかった。次に腹腔マクロファージをWTマウスから単離し、MCP-1を処置したところ、Nrf2の核移行とその標的遺伝子であるHeme oxygenase-1およびThioredoxin-1の発現が増加した。そこでWTおよびNrf2-KOマウスマクロファージを用いて、MCP-1による細胞遊走能をModified Boyden chamber assay法で比較したところ、Nrf2-KOマクロファージで有意な遊走能の亢進を認めた。以上の結果から、Nrf2システムは、血管傷害後のマクロファージの浸潤、遊走に関与することで血管内膜肥厚を調節していることが示唆された。
著者関連情報
© 2016 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top