日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-169
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フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)経口曝露が免疫組織に及ぼす影響
*廣森 洋平竹内 優一郞永瀬 久光中西 剛
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抄録
 フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)は食品包装材などに使用される塩化ビニル剤の可塑剤として汎用されている化学物質である。ヒトのおけるDEHPの1日曝露量は数百µgと推定されており、血中からもng/mLレベルで検出されることから、その日常的な曝露による影響が懸念されている。実際、ハウスダスト中に含まれるDEHP量と子供のアレルギー性喘息との間に正の相関が見られるといった報告があり、免疫毒性を誘発する可能性が指摘されている。しかしその一方で、実験動物を用いた免疫毒性に関する評価においては、統一した見解が得られておらず、DEHP曝露が免疫系の組織に及ぼす影響に関する知見は不十分であるのが現状である。そこで本研究では、DEHPの経口曝露による影響を免疫系の組織を中心に検討を行った。
 DEHPをセサミオイルに溶解し、雌性12週齢C57BL/6Jマウスに50, 500 mg/kg/dayの用量で14日間連続経口投与した後、免疫組織の重量測定、細胞数計測、組織像観察を行った。その結果、DEHP曝露により、体重および臓器重量に変化は認められなかったが、脾臓において細胞数の有意な増加と顆粒球の浸潤が認められた。一方で胸腺についても組織像観察を行ったが、DEHP曝露による異常は認められなかった。続いて、脾臓細胞数増加に伴う炎症反応の有無を検討するため、炎症サイトカインのmRNA発現量をリアルタイムRT-PCRにて解析したところ、TNF-α mRNA発現量の増加が認められた。また、DEHP曝露によって胸腺および脾臓のリンパ球サブセットバランスに与える影響を検討する目的で、フローサイトメトリーによる解析を行ったところ、どちらの組織においてもリンパ球サブセットに有意な変化は認められなかった。以上の結果より、DEHPは、脾臓特異的に炎症を誘発し、顆粒球の浸潤を促進する作用を有する可能性が示唆された。
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© 2016 日本毒性学会
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