抄録
神経毒性は、心毒性や肝毒性と並び薬剤開発中止となる主な毒性の一つである。非臨床における神経毒性の評価は、症状観察や脳の病理組織評価などin vivoの評価系が主体であり、in vitroで神経毒性を評価する系は確立されていない。近年in vitro試験系として、単離神経細胞を用いた多電極アレイ(microelectrode array、以下MEAと略す)システムで自然発火を測定し、神経毒性を評価する検討が報告されている。しかし、MEAを用いた神経活動の変化は、spike数やバースト数での評価が主であり、作用機序が違う薬剤においても同じ変化として評価される可能性が高い。そこで我々は、ヒトiPS細胞由来神経細胞(iCell Neurons、CDI社)及びヒトiPS細胞由来アストロサイト(iCell Astrocytes、CDI社)を用いてin vitro神経毒性評価系、特に新しい解析方法の構築を目的とした検討を行った。
iCell NeuronsとiCell AstrocytesをMEDプローブ(MED-P210A、アルファメッドサイエンティフィック社)で共培養させた。次に自然発火が確認されたプローブにおいて、3つの神経毒性物質(gabazine、4-アミノピリジン、NMDA)および1つの非神経毒性物質(aspirin)をMEAプローブに添加し、神経活動に与える変化をMEAシステム(MED64システム、アルファメッドサイエンティフィック社)で記録した。得られたデータはMobiusソフト(アルファメッドサイエンティフィック社)で解析した。本報告では基本的な波形の解析に加え、新たな解析方法を試みて、MEAの有用性を検討する。