日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-186
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一般演題 ポスター
リンパ肉腫細胞P1798におけるカドミウム長期曝露によるメタロチオネイン誘導能の変化とその役割
川嶋 真実青笹 治*木村 朋紀
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抄録

有害重金属や活性酸素種からの保護など、生体防御において重要な役割を果たしている重金属結合性タンパク質メタロチオネイン(MT)は、ZnやCd、Hgなどの重金属で誘導され、このMT誘導には重金属応答性転写因子MTF-1のMTプロモーターDNAへの結合が必須であることが知られている。一方、ゲノムDNAは、ヒストンに巻きついたヌクレオソーム複合体であるクロマチンとして存在している。一般的にCpGアイランドのDNAがメチル化修飾を受けると転写が抑制され、ヒストンがアセチル化されると転写が活発になることが知られている。近年、このような、いわゆるエピジェネティックな機構が様々な遺伝子発現において重要な役割を担っていることが明らかにされてきている。しかしながら、MT遺伝子発現に対しては、エピジェネティックな発現制御系の存在が断片的に報告されているにすぎない。そこで、重金属感受性を理解する上で重要となるエピジェネティックなMT遺伝子発現制御機構とその役割を解明するために、MT発現が恒常的に抑制されているマウスリンパ肉腫細胞P1798を用いて低濃度Cd長期曝露がMT発現にもたらす影響を検討してきた。その結果、0.1 µM Cd存在下で1週間培養し、その後に10 µM Cdを3時間処理するとMT-I誘導が観察され、この誘導倍率は通常培養条件のP1798細胞に10 µM Cdを3時間処理したときよりも有意に高値となることを報告してきた。また、このときのエピジェネティックな変化として、MT-Iプロモーター領域のCpGアイランドのメチル化が一部解除されていることも明らかにしてきた。今回、このエピジェネティックな変化がもたらすCd感受性への影響を調べるためにLDH逸脱やMTTアッセイによって細胞毒性を評価した。その結果、これら評価系では耐性獲得は観察されなかった。エピジェネティックな変化は一部の細胞のみで観察されていたことから、Cd耐性も一部の細胞のみが獲得しているのかもしれない。現在、1細胞毎での評価を行っている。

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© 2016 日本毒性学会
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