日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-206
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医薬品および生活関連化学物質の塩素消毒による毒性発現
*杉原 数美前 佑樹新川 愛未小林 秀丈清水 良北村 繁幸太田 茂
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抄録

【目的】近年、医薬品や生活関連化学物質 (PPCPs : pharmaceuticals and personal care products)による環境汚染が問題となっている。PPCPsは様々な化学物質から構成されており、特に医薬品類は農薬などと異なり環境影響、環境動態がよく調べられていない。PPCPsを高濃度で含有する生活排水の多くは公共の下水処理場で浄水され河川や海域に放出されているが、下水処理による除去率も物質により異なり、除去されず環境中に流出され、各地の河川中から検出が報告されている。さらに、一般的公共下水処理場では、活性汚泥などによる処理の最終段階で塩素による消毒が行われており、塩素処理により構造変換を受け、変異原性などの毒性を発現することも懸念される。本研究では、PPCPsの塩素処理による構造変化と毒性変動に関して検討を行った。
【実験方法】医薬品や食品添加物を0.2 Mリン酸buffer(pH7.4)に溶解し、次亜塩素酸ナトリウムを加え0.5~24時間反応させた。反応終了後0.2 Mチオ硫酸ナトリウムを加え次亜塩素酸を中和後、Oasis HLBカートリッジで固相抽出し試料とした。経時的な分解率及び分解物の生成をHPLCで検出した。変異原性試験をS.typhimuriumTA100及びTA98を用いて行った。また、水環境毒性試験として発光微生物を用いた試験を行った。
【結果および考察】医薬品類を塩素処理後抽出しHPLCで検出したところ、多くの物質で分解生成物が確認された。塩素処理濃度により分解物生成が異なり、各濃度での生成物を固相抽出し、Ames試験で変異原性を調べた。その結果、いくつかの医薬品で変異原性の発現がみられた。特にクロルプロマジンにおいて顕著な変異原性発現がみられTA100、TA98両株で検出されたが、S9 mix処理を行うことで活性の低下が観察されることより、生成物は代謝により変異原性が低下することが示唆された。今後、生成した変異原性物質の同定および環境中からの検出を行う予定である。

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© 2016 日本毒性学会
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