日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-205
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一般演題 ポスター
マウス肝臓における1,2-ジクロロプロパンの代謝へのCytochrome P450の関与について
*柳場 由絵須田 恵豊岡 達士王 瑞生
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抄録
【背景・目的】校正印刷工場の労働者の胆管がんが多発し、職業性胆管がんの発生は塩素系有機溶剤ばく露との関係が認められた。これまでの研究で、1,2-ジクロロプロパン(DCP)による急性肝毒性発現はCYP2E1により活性化されることを報告した。そこで、今回は、CYP2E1を中心とした酸化的代謝経路における代謝物の探索とCYP2E1以外の代謝酵素の関わりについて検討を行った。
【方法】未処置の雄性の野生型とCYP2E1-KO型マウスから肝臓を摘出し、ホモジネート、サイトゾル、ミクロソーム分画に分け、それぞれの分画とDCPを2分から60分間、37℃でインキュベートし、GC/MSでDCPおよびその代謝物を検出した。また、代謝物の遺伝子損傷についてもあわせて解析を行った。さらに、雄性の野生型マウスの肝ミクロソーム分画にDCPを作用させ、同時にCYP2E1、CYP1A2、CYP3A、ADH阻害剤の添加の有無により、代謝物の産生に対する各分子種阻害剤の効果ついて検討を行った。
【結果・考察】肝臓の各分画とDCPを作用させると、サイトゾル以外の分画で、1-Chloro-2-propanol(CP)とMethylglyoxal(MG)が時間とともに増加し、DCPの代謝物として検出された。従って、CPとMGは酸化的代謝により産生されることが推測される。また、阻害剤を用いた検討では、CYP2E1阻害剤とCYP1A2阻害剤の添加により、CP濃度が阻害剤を添加しない時に比べ抑制され、CYP2E1阻害剤とADH阻害剤の添加により、MG濃度が阻害剤を添加しない時に比べ抑制されたことから、DCPからCPへの代謝にはCYP2E1およびCYP1A2の関与が、DCPからMGへの代謝にはCYP2E1およびADHが関与している可能性が示唆される。さらに、CHL/IU細胞にCP、MGを作用させると、ヒストンH2AXのリン酸化が検出され、遺伝子損傷性を示すことが明らかとなった。以上の結果から、DCPによる遺伝子損傷性を誘発する代謝物としてMGの産生が関与しているかもしれない。
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© 2016 日本毒性学会
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