日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-22
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優秀研究発表 ポスター
Nrf2欠損ゼブラフィッシュの作製及び毒性評価への応用
*山下 晃人出口 二郎山田 徹西村 有平田中 利男
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抄録
【背景・目的】医薬品の開発上、創薬初期段階に種々の毒性を評価し、適切な候補化合物を選定することが重要である。近年、創薬初期に適用可能なin vivo毒性評価モデルとしてゼブラフィッシュが注目されているが、化合物の標的臓器毒性を評価するには検出感度が十分ではないという問題がある。今回、酸化ストレスに対する感度向上を目指して、その防御機構を制御するNrf2をゲノム編集技術により欠損させたゼブラフィッシュを樹立し、そのコンセプトを検証した。【方法】CRISPR/Cas9システムを用い、Nrf2遺伝子を欠損させたゼブラフィッシュを作製した。この動物を用い、過酸化水素に対する耐性やNrf2誘導剤であるsulforaphaneによるレスキュー効果を検証すると共に、毒性発現機序として酸化ストレスが想定されているドキソルビシンの影響を併せて検討した。【結果・考察】樹立したNrf2欠損ゼブラフィッシュの個体発生は正常であり、その繁殖能に影響は認められなかった。また、野生型と比較してNrf2欠損ゼブラフィッシュは過酸化水素に対する感受性が亢進しており、Nrf2下流の抗酸化関連遺伝子の一部で過酸化水素刺激による発現誘導が低下することが確認された。さらに、野生型で認められたsulforaphane曝露による過酸化水素に対する耐性増強はNrf2欠損ゼブラフィッシュでは認められず、今回作製した動物がNrf2遺伝子欠損によって酸化ストレスに対して脆弱であることが確認された。ドキソルビシン処理においても野生型と比較して生存性の低下が認められたことから、本動物は、酸化ストレスによる毒性発現を鋭敏に検出できる有用なモデルと考えられた。
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© 2016 日本毒性学会
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