日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-231
会議情報

一般演題 ポスター
注射用全身麻酔剤の血管外漏出が引き起こす皮膚障害における細胞傷害メカニズム
*髙石 雅樹簗瀬 詩織小島 佳奈武田 利明浅野 哲
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】バルビツール酸系注射用全身麻酔剤が血管外に漏出した際には、漏出部位に急激な変性・壊死が認められる場合がある。そこで本研究では、注射用全身麻酔剤であるチアミラールナトリウム(TA)及びチオペンタールナトリウム(TP)による細胞傷害メカニズムについて検討した。
【方法】①ヒト皮膚線維芽細胞(SF-TY細胞)にTA及びTPの臨床用薬液の10~1,000倍希釈溶液を4~72時間曝露し、細胞生存率を測定した。②SF-TY細胞に、TA及びTPとこれら医薬品に含まれる添加剤のみの薬液を、臨床用薬液の10倍希釈溶液にて24時間曝露し、細胞生存率を測定した。③ヒト肝がん細胞(HepG2細胞)に、TA及びTPの臨床用薬液の100倍希釈溶液を24時間曝露し、細胞内マロンジアルデヒド濃度を定量した。
【結果・考察】①TA及びTP共に、臨床用薬液の40倍希釈溶液より濃い溶液では、曝露4時間後より細胞生存率の低下が認められ、その後もこの細胞傷害性は持続した。また、臨床用薬液の100倍希釈溶液では、曝露開始時の細胞生存率を維持した。一方で、臨床用薬液の1,000倍希釈溶液における細胞生存率は、コントロールレベルであった。②TA及びTPの主薬を含む薬液では、細胞生存率が有意に低下したが、添加剤のみの薬液では細胞生存率の低下は認められなかった。③細胞内マロンジアルデヒド濃度は、TA曝露では約3.5倍、TP曝露では約2倍へと有意に増加した。
以上の結果より、注射用麻酔剤の血管外漏出では、漏出後まもなく細胞傷害が認められ、この傷害は長時間持続すると考えられた。一方で注射用全身麻酔剤の添加剤は、細胞傷害には関与しないことが示された。そして注射用麻酔剤が引き起こす細胞傷害性には、酸化的ストレスが関与することが明らかとなった。臨床において、注射用麻酔剤では血管外漏出後直ちに皮膚障害が認められ、本研究結果はこれを反映するものであった。
著者関連情報
© 2016 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top