日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-259
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一般演題 ポスター
微小管重合阻害薬Combretastatin A4 disodium phosphate によって誘発される心筋傷害の病態形成機序の解明
*栃内 亮太永田 百合子安藤 稔畑 千恵鈴木 倫吉澤 和彦内田 和美角 将一小林 稔秀金子 公幸桑原 正貴
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抄録
【背景】微小管重合阻害薬 combretastatin A4 disodium phosphate (CA4DP) は臨床で心血管毒性が認められている。しかしながら、心筋傷害の病理学的な特徴、心筋傷害の発現機序および心筋傷害と血管病変との関連は不明である。そこで我々は、ラットにCA4DPを用いて心筋傷害を誘発し、得られた変化の特徴から心筋傷害と血管病変との関連を考察した。【方法】①雄性SDラットにCA4DP 30 または 60 mg/kg を 4 日間連続あるいはSalineまたはCA4DP 120 mg/kg を 2 回間歇 (Day 1, 4) で静脈内投与し、最終投与翌日に心臓の病理組織検査を行った。②雄性SDラットにCA4DP 50 mg/kg を 3 日間連続で静脈内投与し、テレメトリー法を用いて投与期間中の心電図を解析した。③麻酔下の雄性SDラットにSalineあるいはCA4DP 120 mg/kg を単回静脈内投与し、投与後 30 分間の血圧を解析した。【結果】①CA4DP 30 mg/kg の投与によって心臓の毛細血管周囲における炎症性細胞浸潤が誘発された。また、60 mg/kg の投与によって心臓の毛細血管周囲の浮腫が誘発された。120 mg/kg の投与によって心尖部の左心室壁内層および心室中隔における心筋細胞の多巣性壊死が誘発された。②CA4DP 50 mg/kg 投与後にST junction の明瞭化およびQT間隔の延長が認められた。③CA4DP 120 mg/kg 投与後30分までに、拡張期血圧の上昇が認められた。一方、収縮期血圧に変化は認められなかった。【考察】CA4DPの投与による心電図変化や心筋の壊死病変の分布から考えると、心筋傷害は冠血流量の低下に起因しているものと推察された。さらに、CA4DPの投与により生じる心臓の初期変化は毛細血管の傷害であると考えられたことおよび拡張期高血圧の要因としては末梢血管の障害による可能性が高いことから、CA4DP投与による心筋傷害はこれら毛細血管に対する障害が複合的に作用して誘発されるものと考えられた。
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© 2016 日本毒性学会
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