日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-265
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一般演題 ポスター
亜ヒ酸によるNK細胞のキラー活性抑制作用に関わる分子機序の解析
*角 大悟小島 有登小川 智子津山 博匡姫野 誠一郎
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抄録

【目的】バングラデシュなどのアジア諸地域において, 井戸水を介した慢性ヒ素曝露による多臓器の発がんが問題となっている. 当研究室ではヒ素化合物による発がんにおいて腫瘍免疫が障害を受けているのではないかと仮定し, 腫瘍免疫を担うナチュラルキラー(NK)細胞の機能変動を検討している. その結果, 亜ヒ酸によりNK細胞のキラー活性が影響を受けていることを見出した(第39回日本毒性学会学術年会). 本発表では, 亜ヒ酸によるキラー活性の減少に関わる因子を探索することを目的とした.
【方法】細胞:ヒトナチュラルキラーNK-92細胞を用いた. DNA microarray:Agilent Whole Human Genome Microarray 4x44K v2を用いた. Primer array:TaKaRa社のNK cell mediated cytotoxicityに掲載されているprimer setを使用した. mRNA発現:RT-qPCR法で検討した. タンパク質発現:western blotで検出した.
【結果】亜ヒ酸(5 µM)の曝露によりキラー活性が低下したNK-92細胞からRNAを回収し, primer arrayを用い検討したところ, キラー活性の抑制因子であるKIR2DL3 mRNAの発現が上昇していることを見出した. KIRファミリーのKIR2DL1, KIR2DL2についても検討したところ, KIR2DL1のmRNA発現は上昇しなかったものの, KIR2DL2に関しては亜ヒ酸により有意に上昇した. 一方, DNA microarrayの結果から, 抑制因子であるCD300aのmRNA発現が亜ヒ酸曝露により約6倍上昇していることを見出した. 亜ヒ酸は転写因子Nrf2を活性化することが報告されている. そこで亜ヒ酸によるKIR2DL3, CD300aのmRNA発現上昇にNrf2が関与しているかについて検討した. Nrf2活性化剤であるフマル酸ジメチルにNK-92細胞を曝露したところ, Nrf2の活性化は検出されたが, KIR2DL3, CD300aのmRNA発現量に変化はなかった.
【考察】亜ヒ酸曝露によるNK細胞のキラー活性の低下に, 抑制性受容体のKIRファミリーのうちKIR2DL2, KIR2DL3およびCD300aの発現上昇を見出した. 今後, これらの発現上昇機序を明らかにしていきたい.

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