日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-266
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BEAS-2B細胞におけるイソチアゾリン系抗菌剤のIL-8発現誘導機構
*有嶋 祐未大河原 晋坂本 彩河野 みどり中村 心一和田 光弘
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抄録

【目的】イソチアゾリン系抗菌剤は、化粧品をはじめとして塗料、接着剤、衛生用品等様々な製品に使用されている。近年、これら抗菌剤の室内空気を介した曝露経路が明らかとなり、皮膚、眼および気道への刺激作用に関連した健康被害が報告されている。本研究では,これら抗菌剤の呼吸器系への影響を明らかにする端緒として、ヒト気道上皮細胞のインターロイキン-8 (IL-8) 発現に対する影響について検討をおこなった。
【方法】ヒト気道上皮細胞株 (BEAS-2B) を2-Methyl-4-isothiazolin-3-one (MIT)、2-n-Octyl-4-isothiazolin-3-one (OIT) および5-Chloro-2-methyl-4-isothiazolin-3-one (CIT) で処理後、IL-8 mRNAの発現量をRT-PCR法で解析した。
【結果および考察】BEAS-2B細胞におけるIL-8 mRNAの発現量は、MIT処理において0.5 µM以上、OIT処理においては2.0 µM以上で濃度依存的増加が認められた。しかしながら、CIT 処理においては、有意な増加は認められなかった。IL-8の発現誘導には細胞内活性酸素種 (ROS) の増加が関与する。そこで、CM-H2DCFDAを用いて細胞内ROSを測定したところ、MIT処理による細胞内ROSの蓄積が観察された。また、ROS消去剤であるN-アセチルシステイン前処理によって、MITによるIL-8 mRNA発現量の増加が有意に抑制された。さらに、MEK、p38 MAPK、JNKの阻害剤であるU0126、SB203580、SP600125前処理におけるIL-8 mRNA発現量の変化を検討したところ、U0126、SB203580においてMITによるIL-8 mRNA発現量増加の有意な抑制が認められたが、SP600125による変化は認められなかった。このことから、MITによるIL-8の発現誘導は、ROS-ERK経路およびROS-p38 MAPK経路の活性化による可能性が示唆された。

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© 2016 日本毒性学会
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