抄録
トキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクトでは、薬剤の安全性予測を目的として、毒性オミクス解析を行ってきた。その中で、薬剤非投与時の雄性SDラット55臓器・組織におけるmiRNAの発現データから抽出した腎特異的miRNAについて、シスプラチン投与腎障害ラットモデルにおいて検討したところ、血漿中・尿中において発現量の増加を認め、毒性バイオマーカーとして利用できること、ひいては多臓器から取得したオミクスデータの有用性が示唆された。第42回日本毒性学会学術年会において、雄性SDラット55臓器・組織におけるmRNAの発現を測定し、臓器特異的遺伝子や発現分布を評価することを目的にした。
10週齢の雌性SDラット〔Crl:CD (SD)〕について、性周期による遺伝子発現の差異を考え、発情前期・発情期・発情後期・休止期それぞれ3個体ずつを選択した。雌性及び性周期の影響を受けると考えられる10臓器について、Rat Genome 230_2.0 Gene Chip (Affymetrix社)を用いて肝臓の遺伝子発現データを取得した。遺伝子発現データはMAS5, global normalizationによる数値化・正規化の後、total RNAの RIN値によるやスキャッタープロットなどによる品質管理やROKU法等サンプル特異的遺伝子の抽出・階層的クラスタリングなどによる各種解析を行った。また、性周期により発現変動を示す遺伝子群を抽出した。
その結果、各種雌性臓器において特異的・選択的遺伝子を抽出することができた。また、同一臓器において、性周期により発現変動を示す遺伝子群を抽出することができた。
これらのデータは臓器特異的遺伝子・発現分布・性周期の解析に加え、他組織のコンタミなどの実験の品質管理など、様々な応用が可能であり、非常に有用であると考えられる。