日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-49
会議情報

一般演題 ポスター
ダイオキシン曝露による水腎症が発達時期特異的に生じる原因
*吉岡 亘西村 典子川口 達也藤澤 希望柳澤 裕之遠山 千春
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
ダイオキシン類は芳香族炭化水素化合物群であり、実験動物に対して、死亡、肝障害、学習障害、水腎症等の毒性現象を引き起こす。水腎症は腎実質菲薄化を特徴とする症状で進行すると腎機能喪失に至る。ダイオキシンによる水腎症は曝露により発症する時期が生後数日までという特徴があり、その理由は不明であった。我々は、ダイオキシンとして2,3,7,8-四塩素化dibenzo-p-dioxin (TCDD)を用いた曝露実験によって、prostaglandin (PG) E2合成系の酵素群の誘導と尿量増加がTCDDによる水腎症の原因であること、水チャネルやイオントランスポータの発現低下を伴うことをこれまで明らかにしてきた。本研究では、曝露による水腎症が生じない成熟マウスに対して0, 20, 80 µg/kg TCDDの腹腔内投与実験を実施し、水腎症発症に関連する遺伝子の発現と尿量を検討した。その結果、TCDD曝露指標となるCYP1A1, AhRRの曝露による発現の顕著な増加をみとめた。PGE2合成系の酵素であるCOX-2, mPGES-1の発現増加、尿濃縮に重要な働きをする水電解質輸送体AQP2, NKCC2, ROMKの発現低下は生じなかった。これらのことから、成熟マウスが曝露による水腎症発症に抵抗性を示すことは、TCDDの腎組織への移行とダイオ キシン受容体の活性化の段階に原因があるのでなく、その下流で制御を受けるCOX-2, mPGES-1が発現誘導されな いことが原因だと考えられた。また、AQP2, NKCC2, ROMKの発現低下が水腎症発症に関連することが示唆された。
著者関連情報
© 2016 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top