日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-52
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一般演題 ポスター
シスプラチンによる腎尿細管細胞でのE-cadherin発現減少に対するシステイニルロイコトリエンの影響
*河合 悦子安藤 真緒近藤 有利夏溝口 捺美清水 佐紀大野 行弘
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抄録
【目的】システイニルロイコトリエン(CysLTs)の産生酵素であるリポキシゲナーゼの阻害剤が急性腎障害からの回復を抑制することが報告されている。しかし、修復過程にCysLTsがどのように関わっているのかについては明らかになっていない。そこで、急性腎障害回復にCysLTsがどのように関わっているのか、CysLTs受容体拮抗薬であるモンテルカストにより検討した。
【方法】SD系雄性ラットにシスプラチン(6 mg/kg, i.v.)を投与し、急性腎障害モデルを作成した。BUNが上昇するシスプラチン投与3日後より実験終了前日までモンテルカスト(2.5 mg/kg/day, p.o.)を投与した。 シスプラチン投与5、14日後に採血および腎摘出を行い、腎障害の指標にBUNと血漿クレアチニンを測定し、組織学的変化はPAS染色で検討した。修復過程で観察されるepithelial-mesenchymal transition (EMT)の指標であるビメンチンとEMTによりその発現が影響されるE-カドヘリンは、それぞれ免疫学的染色により調べた。
【結果】シスプラチンは投与5日後には血漿クレアチニン、BUNそれぞれを有意に増大させ、14日後には減少し回復する傾向がみられた。シスプラチンは、腎髄質外層において刷子縁膜の脱落や尿細管壊死、尿細管拡張などの組織学的変化をもたらした。モンテルカストは、シスプラチン投与14日後のBUNの回復を妨げ、組織障害の範囲を皮質部にまで拡大させた。シスプラチン投与によりビメンチンは拡張尿細管において増大し、その増大はモンテルカストによりさらに増える傾向を示した。E-カドヘリンはシスプラチンによりその発現は減少したが、モンテルカスト併用により生食投与群よりも発現量が増大する傾向を示した。
【考察】モンテルカストはシスプラチンによる急性腎障害の修復を妨げ、シスプラチンによるEMT誘導を亢進させ、E-カドヘリン発現にも影響を及ぼした。これらのことから、腎での修復過程にシステイニルロイコトリエンが影響を及ぼす可能性が考えられる。
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© 2016 日本毒性学会
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