抄録
【目的】急性腎障害の早期診断のために様々な尿中バイオマーカー(BM)が開発されている.我々は,尿中L-type Fatty Acid Binding Protein(L-FABP)が 腎微小循環障害を反映する虚血・酸化ストレスマーカーであり,非臨床腎障害モデルにおいても早期に障害を検出できるBMであることを報告してきた.今回,我々は,ラット28日間反復投与毒性試験において尿中L-FABPを含めた新規腎障害BMの変化を比較検討した.
【方法】雄性SDラット(N=5)にゲンタマイシン(皮下),アロプリノール(経口),アセタゾラミド(経口)を28日間反復投与した.各化合物の投与量は公開されているデータベース(トキシコゲノミクスインフォマティックプロジェクト2: http://wwwtgp.nibio.go.jp/index.html)のデータを参考に腎臓に軽微な変化がみられる付近の用量を設定した.初回投与後6時間,24時間,7,14,28日後に採尿および採血を実施した.血液生化学検査としてBUN及び血清クレアチニン(JCA-BM6010,日本電子)を測定した.尿中バイオマーカーはL-FABP,NGAL,Kim-1,NAG,Cystatin C及び TPを全自動生化学測定装置(JCA-BM6010,日本電子)及びELISA法で測定した.腎臓はHE及びPAS染色を行い,病理組織学的検査を行った.
【結果】各化合物とも,一般状態,体重,血中腎障害BM(BUN及び血清クレアチニン)は投与期間を通じて明らかな変化はなかった.本発表では,尿中L-FABP及び腎障害BMの変化と腎臓の病理組織学的変化との関連性を報告する.