日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-63
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一般演題 ポスター
ドキソルビシン心毒性に対するデスアシルグレリンの治療効果の検討
*野中 美希杉原 匡美呉林 なごみ村山 尚白石 成二宮野 加奈子細田 洋司岸田 昭世寒川 賢治櫻井 隆上園 保仁
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抄録
ドキソルビシン(DOX)は、様々な新規抗がん剤が開発されている現在においても重要な抗がん剤として多くのがん腫に使用されている。しかし、腫瘍以外の組織、特に心筋組織への重篤な有害作用のため、その使用が制限されている。現在のところ、DOXの心毒性に対する画期的な予防薬は見当たらず、その開発が求められている。摂食促進ホルモングレリンにはアシル化修飾のないもう一つの分子型デスアシルグレリンがあり、グレリン受容体への結合能はない。デスアシルグレリンが、近年DOXによって起こる心筋アポトーシスを抑制することが報告され、心筋症予防能を有する可能性が示唆されている。しかし未だデスアシルグレリン特異的受容体が未同定のため、詳細な分子メカニズム解析は行われておらず、DOX心筋症等の新規心不全治療薬としての開発情報はほとんどない。本研究では、ラット心筋由来H9C2細胞を用いて、DOXによる心筋障害および心筋アポトーシスへのデスアシルグレリンの効果をlive-cell imagingシステムであるIncuCyte ZOOM®を用いて解析した。H9C2細胞にDOX( 0.1、0.3、0.5 µM)とデスアシルグレリン1 µMを同時処置し72時間incubateすると、デスアシルグレリンはDOX単独処置で認められる細胞障害を有意に抑制した。Caspase 3/7 kitを用いたアポトーシスアッセイでは、DOXによる細胞障害はアポトーシスによるものであり、デスアシルグレリンは、DOXによるアポトーシスを有意に抑制することを明らかにした。以上より、DOXはH9C2細胞においてアポトーシスを誘導するが、デスアシルグレリンはそのアポトーシスを抑制することを見出した。本学会では、DOXによるアポトーシスをデスアシルグレリンが抑制するメカニズムについても併せて紹介したい。
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© 2016 日本毒性学会
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